産業医 コラム

適正飲酒について ~適量と付き合い方を知ることが大切です~

2023年12月7日

近年における日本人の飲酒傾向について

少子高齢化や人口減少等の人口動態の変化、ライフスタイルの変化や嗜好の多様化等により、酒類の国内市場は中長期的に縮小傾向にあります。成人一人当たりの酒類消費量の推移では、平成4年度の101.8Lをピークに令和3年度は74.3Lまで減少しています。

【男女別習慣飲酒率の推移】
厚生労働省の調査では週に3回以上飲酒する習慣飲酒者は、男性では平成元年の51.5%に比べ令和元年では33.9%へ大きく減少しています。一方、女性では同時期で6.3%から8.8%と逆に増加しており、30代から70代まで幅広い年齢層で習慣飲酒者が増えています。同調査では生活習慣病のリスクのある飲酒者(男性40g/日以上、女性20g/日以上)は、男性では平成22年から令和元年では有意の変化がないのに対して、女性では8.0%から9.1%と有意な増加がみられ、今後、女性の飲酒問題の対策がより重要となると考えられます。

【世代別習慣飲酒率にも変化】
世代ごとの飲酒習慣は40代から60代の世代でその割合が高く、各世代とも3割弱となっています。現在、20代は7.8%と40代以上の世代の若い頃と比較すると飲酒習慣が非常に低く、若い世代は飲酒回数や飲酒量が少なくなっていることがうかがえます。このように、近年における日本人のアルコール消費動向に変化がみられます。

 

1日の適正飲酒量について

厚生労働省の示す指標は、ガイドライン「健康日本21」の中で「節度ある適度な飲酒」を「1日平均純アルコールで20g程度(※)」と定義しており、これが一般的には適量と言われています。  
(※)ただし、女性や高齢者、飲酒後にフラッシング反応(少量のお酒で顔などが赤くなる反応)を起こす人は、これより飲酒量を少なめにすること)

▼アルコール量20gの目安
・日本酒(度数:15%) 180ml
・ビール(度数:5%) 500ml
・焼酎(度数:25%) 約110ml
・ワイン(度数:14%) 約180ml

 

血中アルコール濃度と酩酊症状との関係

血中アルコール濃度とは、飲酒して消化管から吸収されたアルコールが、血中に移行した状態の濃度を指し、酔いの程度を決めます。また、酩酊症状とはアルコールを摂取して生じる急性の中毒症状のことをいい、大脳の高等感情が統制を失い、発揚状態を示します。血中アルコール濃度が高くなるにつれ、酩酊症状も変化し、昏睡状態や死亡に繋がることがあるため、いかに飲みすぎが体に危険をもたらすかがわかります。

 

適正飲酒の10か条

適正飲酒とはどのようなことでしょうか。公益社団法人アルコール健康医学協会では「適正飲酒の10か条」をわかりやすく簡潔にまとめています。この10か条を意識し、適量を適切な方法で飲むようにしましょう。

【適正飲酒の10か条】
①談笑し 楽しく飲むのが基本です
②食べながら 適量範囲でゆっくりと
③強い酒 薄めて飲むのがオススメです
④つくろうよ 週に二日は休肝日
⑤やめようよ きりなく長い飲み続け
⑥許さない 他人(ひと)への無理強い・イッキ飲み
⑦アルコール 薬と一緒は危険です
⑧飲まないで 妊娠中と授乳期は
⑨飲酒後の運動・入浴 要注意
⑩肝臓など 定期検査を忘れずに

 

アルコールハラスメント

アルコールハラスメントとは、飲酒に関連した嫌がらせや迷惑行為、人権侵害を指します。アルコールハラスメントを発生させないためにも、一人ひとりが危険意識や責任を持ち、ルールを守ってお酒を楽しむことが必要です。

●飲酒の強要
上下関係、部の伝統、集団によるはやしたて、罰ゲームなどといった形で心理的な圧力をかけ、飲まざるをえない状況に追い込むこと
●イッキ飲ませ
場を盛り上げるためにイッキ飲みや早飲み競争などをさせること
●意図的な酔いつぶし
酔いつぶすことを意図して飲み会を行うことで、傷害行為にもあたる
●飲めない人への配慮を欠くこと
本人の体質や意向を無視して飲酒をすすめる、宴会に酒類以外の飲み物を用意しない、飲めないことをからかったり、侮辱するなど
●酔ったうえでの迷惑行為
酔ってからむこと、悪ふざけ、暴言、暴力、セクハラ、その他のひんしゅく行為

 

家飲みの注意点

年末年始にかけて、家飲みの機会が増える方も多いと思います。家飲みの場合、外で飲む場合と異なり終電や閉店時間、周りの目や、他の人の飲むペースを気にしなくて良いですが一方で飲み方には注意が必要です。

【家飲みの注意点】
・最初に飲む時間を決めておき、長時間飲み続けない
・飲む量を最初にだいたい決めておく
・その日に飲む種類のお酒のストックは絞っておく・買い置きしない
・適宜、水やノンアルコールドリンクを飲む
・翌日に残らないか注意する

 

最後に・・

お酒を正しく飲むことは、健康で幸せな人生を送ることにもつながります。コロナ禍を経て働き方にも変化がみられる現状を踏まえ今一度お酒との付き合い方を見直してみましょう。