産業医 コラム

在宅ワークでおきやすい体調不良 ~生産性を高めるためにも予防と対策を~

2023年10月5日

業務内容にもよりますが、この数年間で在宅勤務(テレワーク)がある生活が定着した方も多いのではないでしょうか。在宅勤務にはメリットもたくさんありますが、在宅勤務で起きやすい不調についてあらかじめ理解し、予防することも大切です。

【テレワークにおけるメリット】
オフィスでの勤務に比べて…
・働く時間や場所を柔軟に活用できる
・通勤時間の短縮や、これに伴う心身の負担の軽減
・育児や介護、病気治療と仕事の両立の一助となるなど、仕事と生活の調和を図ることが可能となる など

 

在宅ワークでおきやすい不調

姿勢による肩こり・腰痛

仕事をするために整えられた環境であるオフィスとは異なり、自宅などで無理な姿勢で作業を行うと肩や腰に負担がかかります。在宅ワークを行う際には作業環境を整えましょう。また作業中の姿勢や、作業時間にも注意することが大切です。

【部屋】設備の占める容積を除き10㎥以上の空間
【窓】ディスプレイに太陽光が入射する場合はブラインドやカーテンを設ける
【湿度・温度】室温17℃~28℃ / 相対湿度40%~70%となるよう努める
【照度】机上は照度300ルクス以上とする
【椅子】座面の高さを調整できる / 傾きを調整できる背もたれがある / ひじ掛けがある
【PC】ディスプレイは照度500ルクス以下で輝度やコントラストが調整できる / 操作しやすいマウスを使う
【机】必要なものが配置できる広さがある / 作業中に脚が窮屈でない空間がある
【その他】ディスプレイと約40㎝以上の視距離を確保 / 情報機器作業が長時間にならないようにする

 

眼精疲労

在宅ワークの場合、対面で会議や会話する時間がないため、パソコンを見る時間が長時間となり目が疲れやすくなります。眼精疲労を防ぐための簡単な方法として「20-20-20ルール」を紹介します。これはカリフォルニアの眼科医が提案したルールで、情報機器を使用する場合は20分毎に20秒小休止をとり、その間に20フィート(約6m以上)先を見ましょうというものです。集中しやすい環境でつい作業に没頭しがちになりますが、小休止をとることを意識しましょう。スマートフォンの使い過ぎも目の疲れや肩こり等の不調につながります。使い過ぎには注意しましょう。

 

運動不足による不調

在宅勤務の日は行動範囲が限られ、歩数計を確認すると数百歩しか動いていない、ということはないでしょうか。ついつい座りっぱなしになってしまう仕事中ですが、日常的に座る時間が長すぎると健康リスクが高まります。日本人は常日頃から座位時間が長いという調査データもあり、こまめに動くことが大切です。
1日の歩数は8,000歩を目安に歩きましょう。またジムに行く、水泳をする、スポーツをする、なども良いですが、まずはできるところからということで、動画サイトでお気に入りの運動動画を見つけて1日10分でもやってみることから始めてみるのもよいでしょう。ラジオ体操もお勧めです。
身体活動量が多い人、運動をよく行っている人は、総死亡、虚血性心疾患、高血圧、糖尿病、肥満、骨粗鬆症、結腸がんなどの罹患率や死亡率が低いこと、また身体活動や運動が、メンタルヘルスや生活の質の改善に効果をもたらすことも認められています。高齢者においても歩行など日常生活における身体活動が、寝たきりや死亡を減少させる効果のあることが示されています。ぜひ運動習慣を身につけましょう。

 

メンタルヘルスの不調

様々なメリットもある在宅ワークですので、ストレスが減ったという意見も多いですが、一方で「オン・オフがつきづらく長時間労働になりやすい」「コミュニケーションが取りづらい」などメンタルヘルスの不調につながりやすい点もあります。チャットやオンライン会議システム等の積極的な活用、コミュニケーションをとる機会の定例化(上司・部下の定例会議、1オン1等) 、業務以外の場での交流の機会の設置等でコミュニケーションを意識しましょう。特に、新入社員や中途入社者、異動してきた方については十分にケアしましょう。
長時間労働を予防するためには、メリハリをつけた勤務が大切です。オンライン会議が休憩もなく重なっているなどということは避け、休憩時間も入れて設定するようにしましょう。不調を感じたり、悩みがあるときは、抱え込まずに周りに相談することも大切です。

 

最後に・・

在宅ワークにはメリットも多いですが、気を付けるべきポイントもあります。その点も理解し対処して健康を保ちながら、生産性の高いハイブリッドワークをしていきましょう。