産業医 コラム

健康診断・二次検査の必要性 ~健康診断結果を活用しましょう~

2024年4月5日

みなさんは毎年健康診断の結果を確認していますか?
今回は健康診断とその結果の確認の必要性について考えてみましょう。

 

健康診断の目的

■健康診断を受診する目的
一次予防:病気にならないよう健康の維持増進に役立てる
⇒食事や運動などの生活習慣改善を行うきっかけになります

二次予防:病気の早期発見、早期治療に役立てる
⇒自覚がなくても病気が進行している場合もあるので、重症化する前に早期発見、治療につなげます

健康診断は、個人の健康状態を把握し、疾病の予防や悪化防止に用いるだけではなく、“健康的に職場で働くことができる”という証明にもなります。

 

健康診断の種類

職域における健康診断には、法律でその実施が義務付けられているもの、行政指導としてその実施を要請しているもの、企業等の判断で実施しているもの、があります。法律でその実施が義務付けられているものには、すべての労働者に対する一般健康診断と、特定の有害業務従事者に対する特殊健康診断があります。

■一般健康診断
定期健康診断/特定業務従事者の健康診断※/ 雇入れ時の健康診断/海外派遣労働者の健康診断 など
※深夜業健康診断が該当します

■特殊健康診断
じん肺健康診断/有機溶剤健康診断/電離放射線健康診断/鉛健康診断  など

 

法律に基づく健康診断

労働安全衛生法第66条に基づき事業者と労働者の双方に健康診断が義務づけられています。義務として健康診断を受診することで、適正配置や生活習慣病等の増悪防止につながります。

■一般健康診断について
【事業者の義務】 
第1項:事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない(健康診断実施義務) 

【労働者の義務】
第5項:労働者は、前各項により事業者が行なう健康診断を受けなければならない(自己保健義務)
※定期健康診断は年度に1度の受診が必須。

 

健康診断で何を見ているのでしょうか?

定期健康診断では、労働安全衛生法で以下の法定項目が定められています。

身長 / 体重 / 腹囲 / 視力検査 / 聴力検査 / 胸部レントゲン検査 / 心電図検査
血圧測定 / 血液検査(貧血、肝機能、脂質、血糖) / 尿検査(糖、蛋白)    など
※バリウム検査やがん検診などは、人間ドックの一部でオプション検査として受診する項目です

 

健康診断結果を活用しましょう

自分自身の健康管理のためにも、以下健康診断結果の活用ポイントを参考にしてみてください。

その① 検査数値の現状と経年変化を見る
各検査項目の数値を基準値と比較して確認しましょう。過去からどのように推移しているかもチェックして、自分のからだの変化を確認しましょう

その② 動脈硬化リスクの重複をチェック
検査項目1つずつ見るだけでなく、複合的に検査項目の結果を見て、肥満・高血圧・脂質異常・高血糖などの動脈硬化リスクが重複してないか否かもチェックしましょう

その③ 検査数値の原因を自分なりに振り返る
検査結果がよかった人もよくなかった人も、なぜよかったのか、なぜよくなかったのか原因を自分の生活習慣から見つけましょう

その④ 生活習慣の改善成果をみる目安になる
これまでの努力の効果を確認しあらためて医師や保健師等に相談するきっかけになります

その⑤ 「早期発見、早期治療」のチャンス
要精密検査、要治療と診断された方は、なるべく早く医療機関へ受診しましょう

 

健康診断の有所見率

厚生労働省が発表している、全国の定期健康診断における有所見率は、年々あがっており2022年には受診者のうち58.3%が健康診断で何らかの異常が認められました。健康診断は自分の病気を発見し、向き合う大切な機会です。自分や周りの大切な人のためにも必ず受診するようにしましょう。また、20~30代では体重以外の数値の異常は認められにくく、変化に気付きにくい方が多いようですが、40~60代になると、加齢とともに脂質異常症、高血圧、糖尿病と生活習慣病に深く関わる疾患が増えてきます。これらの疾患は自覚症状が出にくいため放置されがちですが、年齢とともに脳卒中(脳梗塞、脳出血)や心筋梗塞などの重篤な疾患の発生リスクが高くなっていきます。健康診断で確認し、早期の対応が必要です。前年度のご自身の結果と比較し、翌年健康診断を受けるまでの健康指標としてください。

 

二次検査の必要性と受診先(項目ごと)

健康診断は、あくまでも生活習慣改善の必要性や病気を早期発見するための手段であり、健診結果を踏まえた次の行動が重要です。早めに対応することで重症化を防ぐことができます。健康診断の結果で「再検査」や「精密検査」等の判定が出たら、自分の身体の状態を見直す大きなターニングポイントとなります。しかし、「医療機関受診が必要であっても、何科を受診したらよいか?」と迷う方もいるかと思います。主な健診項目と受診先については、健診機関からの結果・通知や以下を参考にしてみてください。

 

最後に・・

健康診断は結果を活用してこそ意味があります。健診結果の経年変化や所見を確認し、再検査や精密検査の指示があれば必ず対応しましょう。ただし、健康診断ですべての病気がわかるわけではありませんので自覚症状などがあれば早めに病院を受診しましょう。