産業医 コラム
メンタルヘルスケア ~ストレス耐性を高めることが大切です~
2024年7月8日
メンタルヘルスの健康度
メンタルヘルスと一口に言っても、何を指標に心の健康度を考えていけばよいでしょうか?
(1)夜ぐっすり眠れて、朝起きたとき気分が良い
(2)食事がおいしいと感じられる
(3)体が軽やかで、健やかに感じられる
(4)家族との会話もスムーズであり、問題はない
(5)友人や仲間との良好な関係を築けている
(6)趣味やスポーツなどを楽しむことができる
(1)~(3)は活動に要するエネルギーが充電されているか、(4)~(6)は心の外界(環境や人間関係)、心の内界(感情、欲求など)が機能しているかを表しています。体調と心は常に一体ですので、両面から心の健康度を捉えることが重要です。
職場のストレス要因(ストレッサー)
働く人々を取り巻くストレスには様々な要因がありますが、テレワークの需要が高まりストレス要因が増えています。
【組織の問題】働き方改革と時間管理 / 自由意志や行動の制限 / 評価制度 / テレワーク・在宅勤務制度化
【仕事自体の問題】量やスピード / 仕事の質の変化/時間のコントロール / オフィスワークとテレワークのMIX
【社内の人間関係】上司との人間関係 / 一人作業の増加・孤立 / 周囲との関係性が希薄化
【会社以外】家族の問題 / 育児 / 介護 / ワークライフバランス
【キャリア】モチベーションの低下 / 将来への不安 / 異動や転職に関する悩み
過度のストレスによる病的反応(ストレス反応)
適切なストレスは生産性向上につながりますが、過度なストレスはエネルギーを消費し疲弊、生産性が落ちてしまいます。また過度のストレスにさらされてくると、人間はストレス反応という危機的な反応を示すようになります。「身体面」・「精神面」・「行動面」で様々な症状が現れます。
身体面
・自律神経症状
不眠 / 頭痛 / 動悸 / 息苦しさ / 喉の詰まり感 / 嘔気 / めまい / 食欲不振 / 腹痛 / 下痢 / 便秘
・心身症
生活習慣病 / 胃潰瘍 / 十二指腸潰瘍 / 不整脈 / 過敏性腸症候群 / 潰瘍性大腸炎 / 月経前症候群
精神面
・情緒不安定
神経過敏 / 感情の波が大きくなる / 不安感 / 不機嫌 / いらいら
・性格変化
口数が減る / 暗くなる / 無気力 / 落ち着きがなくなる / 怒りっぽい
・精神障害
不安障害:神経症 / 感情障害:うつ病、躁病 / 思考障害:統合失調症
行動面
・勤怠の乱れ
欠勤 / 遅刻 / 早退の増加
・業務遂行能力の低下
集中力の低下 / 作業能率の低下 / ミスの増加
・対人関係の悪化
協調性低下 / もめごと / 孤立
・日常生活の乱れ
生活リズムの不規則化 / 睡眠時間の乱れ / 生活態度の乱れ
・逸脱行動
アルコール依存 / ヘビースモーク / 性トラブル /暴力 / 嗜癖(しへき)行動
ストレス耐性を高める
ストレス耐性を高めることで、ストレス反応を起こさないようにします。
ソーシャルサポート
良好な人間関係は、精神的に大きな支えとなります。ただし、職場においては少し工夫が必要です。プライベートでは温かく・優しく・丁寧に接するように心がけますが、仕事では“ビジネスライク”を意識し、求められる役割をしっかりと遂行することが大切です。仕事でコミュニケーションを取る際は、“何が”問題なのか や “誰が”行うのかなど、主語・述語を明確にしましょう。また、日頃から報告を習慣づけると報告の流れで相談もしやすくなります。立場が上の方は部下やメンバーへ「何かあったら、相談してね。」と伝えても、相談するタイミングがわからず、いきなり相談できない方がいることもご理解ください。
ストレスコーピング
ストレスコーピングとは、ストレスに対する対応の仕方です。
◆ストレッサー(ストレス要因)にアプローチ
・ストレスの原因となっている物事を根本から解決する(問題焦点型)
⇒優先順位をつける/できることから取り組もうとする
・周囲の人に相談し、アドバイスを得る(社会的支援探索型)
⇒協力を得られる仲間と話し合って解決策を探す
◆感情にアプローチ
・ストレスを誰かに話し、聞いてもらうことで解消する(情動焦点型)
⇒家族や親しい友人に話を聞いてもらう
・ストレッサーに対する捉え方を修正し、自分の認知を変えていく(認知的再評価型)
⇒認知行動療法:ストレスに対して、適切な認知や対処行動へと修正していく方法
◆ストレスを発散させるアプローチ
・自分の好きな事をして気分転換する(気晴らし型)
⇒ショッピングに行く、美味しいものを食べる など
・リラクゼーションを取り入れる(リラクゼーション型)
⇒ヨガ・マッサージなど
リラクセーション
リラクセーションは、仕事の特性と反対の性質をもった趣味や楽しみがあると効果的です。
最後に・・
健康でいるためには自分にあったメンタルヘルスのセルフケア方法を見つけておきましょう。また、時には周りを頼りにすることも大切です。心身の不調が続いている場合は、早めに専門医にご相談ください。