産業医 コラム

花粉症・アレルギー~突然発症することもあるので要注意~

2022年1月6日

増え続けるアレルギー疾患

私たちの体には、自分の体の成分と違う物、例えば細菌、ウイルス、食物、ダニ、花粉などが体の中に入ってくるとそれを異物として認識して攻撃し排除する仕組みがあります。これを「免疫」と呼んでいます。アレルギー反応も広くは免疫反応の一部ですが、異物に対して反応する際に自分の体を傷つけてしまう場合をアレルギー反応と呼んでいます。
現在、日本では約2人に1人が、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症、食物アレルギーなど何らかのアレルギー疾患に罹患していると言われており、国の調査でも増加傾向にあると言われています。代表的なものとして、花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)があげられますが、東京都の「花粉症患者実態調査報告書(平成28年度)」によると、都民のスギ花粉症の推定有病率は48.8%と示されており、年々増加傾向にあります。今回は、代表的なアレルギー疾患である花粉症について説明します。

 

花粉症とは

花粉を原因として引き起こされるアレルギー反応による症状を花粉症とよびます。

■花粉症のメカニズム
 ①花粉などのアレルゲン(抗体)が鼻粘膜に付着
 ②リンパ球がIgE抗体をつくり、IgE抗体が肥満細胞に張りつく
 ③アレルギー症状を起こす原因となる化学物質(ヒスタミンなど)が分泌される
 ④花粉をできる限り体外に放出しようとし、アレルギー症状が起こる

                    出典:日本アレルギー学会 「アレルギーを知ろう(花粉症)」

主に以下の症状を生じます。
【アレルギー性鼻炎】くしゃみ、水様性鼻みず、鼻づまり
【アレルギー性結膜炎】かゆみ、充血、涙など

そのほかに、のどの症状(かゆみ、刺激感)、咳、胃腸症状(痛み、下痢)、顔などの露出部皮膚の発赤、かゆみ、さらに頭重感、頭痛などの全身症状を訴える方も多く、日常生活に支障をきたします。

 

花粉の種類と地域差、シーズン予測

花粉症を引き起こす植物は、日本では約50種類が報告されています。春に飛ぶ、スギやヒノキの花粉がよく知られていますが、夏から秋にかけて飛ぶ、イネ科植物やキク科植物(ヨモギやブタクサ)などの花粉でも症状が起こります。また地域によっても飛ぶ花粉の種類や時期が違います。北海道ではシラカバ花粉によるものが多く、沖縄にはスギが全く生息しません。
毎年の花粉の飛散予測情報が、気象協会他から出ています。現時点の情報(2021年10月5日発表)では「2022年春の花粉飛散予測は、九州や北陸では例年並み、中国、四国、近畿、東海では例年より少ない見込みです。一方、関東甲信や東北は例年よりやや多く、北海道は例年より非常に多い」と発表されています。今後の情報や、花粉飛散時期には毎朝の天気予報もご参考ください。

 

花粉症による仕事への影響

働く場でも、花粉症対策は重要です。花粉症の症状で、会社を休むほど不調になることは多くないでしょうが、1日に何度も鼻をかまなくてはいけない、目がかゆくてPC画面を見るのもつらい、鼻がつまって頭がぼーっとして集中できないことがあると思います。また薬の副作用と合わさって、日中も眠い、頭がうまく働かないなど、普段通りに仕事ができない場合も出てきます。そのため、花粉症を含むアレルギー性鼻炎患者は欠勤や労働生産性の低下で1人あたり年間19万1783円の経済的損失が生じるとされています。
仕事の生産性に大きく影響のある花粉症ですが、仕事を切り上げてまで受診するほどの緊急性を感じるわけでもないため、毎年症状はあるものの治療をせずに過ごされる方も多いようです。東京都の実態調査でも、医療機関を受診していない方が57.3%と、過半数となっているようです。職場でも花粉症について正しい知識を持ち、必要な人が必要な治療を受けることが重要です。今の季節から準備をすすめ、症状に合わせ必要な治療を受けるようにして下さい。

 

花粉症の対策

花粉症対策の原則は原因物質の排除です。そのためには、花粉飛散情報を利用して外出や窓の開閉の工夫をして花粉曝露を避ける、マスクや眼鏡、花粉の付着しにくい帽子やコートの着用等を利用して侵入する花粉の量を減少させる、掃除を心掛ける、など職場・学校・自宅の中に花粉を持ち込まない対策が重要です。新型コロナウイルス感染症流行対策で日常的に着用しているマスクは花粉症対策にもなります。花粉の粒子の大きさは、3-40㎛(マイクロメートル)であるのに対し、新型コロナウイルス粒子の大きさは0.1㎛(飛沫の大きさは約2㎛)です。不織布のマスクを顔にフィットさせてつけるようにしましょう。

 

花粉症の治療

「アレルゲン免疫療法(減感作療法)」は、注射や薬を使って抗原を少量から徐々に増量しながら体内へ摂取、抗原特異的に過敏性を減少させる治療法で、根治的な治療法です。もっとも広く行なわれているのは「薬物療法」です。いろいろな特徴をもった薬剤がありますので、症状に合わせて使うことで高い効果がみられます。内服薬に加え、全身的な副作用の少ない点鼻薬の選択肢も増えています。花粉症の症状の出現前・ごく初期に治療を開始すると粘膜の炎症の進行を止め、早く正常化させることができるため、花粉症の重症化を防ぐことができます。シーズン中の継続的な薬物治療が必要です。病院で受診すると保険診療で処方薬をもらえますが、市販薬の選択肢も増えてきています。受診時間が取れない方は、市販薬の活用も選択肢ですが、症状の強い方は、ぜひ一度、アレルギー内科や耳鼻科を受診してください。

 

花粉症がひどくならないために

一般的に花粉症がひどくならないためには、普段の生活のなかで、以下のことに気をつけると良いでしょう。
・睡眠をしっかりとる
・規則正しい生活をする
・バランスのよい食事をとる
・手洗いやうがいの励行
・お酒の飲みすぎに気をつける

・タバコを控える(粘膜を正常に保つために重要です)
・アレルギー血液検査などを受け、自身のアレルギーを知っておく(耳鼻科や内科で受診可能です)

 

最後に・・

花粉症やアレルギーの症状が出てきたら早めに医療機関を受診した方が症状の改善につながります。突然症状が出る場合もあるので、他人事とは思わず症状に合わせ必要な治療を受けるようにしましょう。