産業医 コラム

結核について~9月は結核予防週間です~

2021年9月3日

厚生労働省による結核登録者調査では、結核の患者数及び罹患率(人口当たりの新規結核患者数)は順調に減少傾向を呈しています。2019年に新たに結核患者として登録された者の数(新規登録結核患者数)は15,000人を下回り、14,460人で前年より1,130人(7.2%)減少しています。2019年の結核罹患率(人口10万対)は11.5であり、前年に比べ0.8ポイント減少しています。日本の結核罹患率は近隣アジア諸国に比べ低い水準にあり、米国等他の先進国の水準に年々近づいています。9月24日から9月30日は結核予防週間です。先ずは結核を正しく知ることが予防の第一歩です。

 

コロナ禍でさらに減少傾向に?

2020年、2021年はさらに新規登録結核患者数は減少しているようです。コロナ禍における外出自粛など人々の行動の変化やソーシャルディスタンスなど人々の間での接触機会の変化を引き起こし、結核感染の低下へと影響を及ぼしている可能性があります。その一方で、医療機関や保健所の業務の多くが新型コロナウイルス感染症の対応に追われ、結核対策関連業務の圧迫が結核患者発見などの低下を招くといった影響も懸念されます。また、コロナ禍における受診控えが主な原因であれば、恐らく今後は結核患者数が再び増加に転じます。結核を疑う症状があれば必ず医療機関を受診するようにしてください。

 

結核ってどんな病気?

結核とは結核菌により引き起こされる病気です。多くは肺を侵し、炎症から始まり、やがて肺の組織を破壊し、呼吸する力を弱めます。また肺だけではなく、リンパや血液の流れに乗って脊椎や腎臓、リンパ節、脳などの他の臓器を侵すこともあります。

 

「感染」と「発病」

結核を発病している人が、体の外に菌を出すことを「排菌」といいます。せきやくしゃみをすると飛沫(しぶき)と共に結核菌が飛び散り、それを他の人が吸い込むことにより「感染」します。なお、結核菌は紫外線に弱く、日光に当たると数時間で死滅します。
結核菌を吸い込んでも必ず「感染」するわけではありません。
多くの場合、体の抵抗力により追い出されます。しかし、しぶとく菌が体内に残ることがあります。その場合、免疫が結核菌を取り囲み「核」を作ります。「結核」という名の由来はそこにあります。結核菌が体内に残っていても、ほとんどの場合、免疫によって封じ込められたままであり、一生発病しません。こうして菌が体内に潜伏し、封じ込められたまま活動していない状態のことを「感染」といいます。「感染した」だけの状態なら、周囲の人にうつす(感染させる)心配はありません。
「感染」したからといって、全ての人が「発病」するとは限りません。
「発病」とは感染した後、結核菌が活動を始め、菌が増殖して体の組織を冒してゆくことです。症状が進むと、せきや痰と共に菌が空気中に吐き出される(排菌)ようになります。「発病」とは感染した後、結核菌が活動を始め、菌が増殖して体の組織を冒してゆくことです。症状が進むと、せきや痰と共に菌が空気中に吐き出される(排菌)ようになります。ただし、「発病」しても「排菌」していない場合は、他の人に感染させる心配はありません。感染した人が発病する確率は、5~10%といわれています。感染してから2年くらいの内に発病することが多いとされており、発病者の60%くらいの方が1年以内に発病しています。 抵抗力のない人(お年寄り、過労、栄養不良、他の病気による体力低下等)は注意が必要です。免疫力が弱まっているときは、結核菌が再び活動を始め、発病しやすい状態と考えられています。

 

どんな検査をするの?

【感染しているかを調べる検査】
・ツベルクリン反応検査
結核菌感染の有無を知る一つの検査法です。ツベルクリンという液を皮内注射して、48時間後に判定します。結核菌感染やBCG接種を受けた人は、皮膚が赤く反応します。痰の採れない方、胸部X線写真の撮影が出来ない方に有効です。
ただし、反応が結核感染の為か、類似の非結核性抗酸菌による感染の為か、あるいはBCG接種の為か判断しにくい場合があります。
・QFT(クォンティフェロン)検査
血液検査によって結核の感染を調べることができます。ツベルクリン反応検査は48時間後に皮膚反応を測定するため、再度医療機関を訪れる必要がありますが、QFT検査なら試験管内で検査できます。BCGワクチンの影響を受けない為、ツベルクリンに代わって行われることが多くなっています。

【発病しているかを調べる検査】
・ X線撮影検査
X線撮影(胸部レントゲン、CTスキャン)で肺の中に映る影を認めれば、何らかの異常があると考えられます。レントゲンで疑わしい場合は、痰の検査で診断します。
・ 喀痰(かくたん)検査
結核菌を「排菌」しているかどうかを診断します。塗抹検査(痰をスライドグラスに塗り付けて顕微鏡でみる)、培養検査(培地に痰を塗って増殖した菌をみる)、遺伝子検査などがあります。結核菌は増えるのが遅いので、培養検査では結果が出るまでに何週間かかかります。痰の一部を培養して、菌の種類や薬剤が効くか(耐性)を見極めます。

 

こんな症状が続いたら

・咳が2週間以上続く
・痰がでる(痰に血が混ざる)
・体がだるい         
・微熱が続く

結核の初期は風邪症状と似ています。上記のような症状が続いたら早めに病院を受診しましょう。

 

もし結核と診断された場合は

結核が「発病」して「排菌」している場合は、入院になります。「発病」しても「排菌」していない場合は、通院治療が可能です。基本的に3~4種類の薬剤を服用します。服用期間は、基本的に6ヵ月ですが、個人の病状や経過によって長くなることがあります。結核は通常、薬を医師の指示通りに飲めば治ります。大切なのは、医師から「薬を飲むのを止めてもいい」と言われるまで、処方された通りに薬を飲み続けることです。咳が止まったからといって勝手に薬の飲み方を不規則にしたり、飲むのを止めてしまったりすると、結核菌が「耐性」を持ち、薬の効かない菌(耐性結核菌)が出来てしまい、治療が難渋してしまいます。
もし病院で結核と診断された場合は早急に上長および人事へ連絡をしてください。また職場での対応は保健所から指示がありますので、あわてずに保健所の連絡をお待ちください。

 

最後に・・

結核に感染しても体の抵抗力が高ければ発病することはありません。日頃から免疫力を高めるために規則正しい生活、栄養バランスのよい食事、十分な睡眠、適度な運動などを心がけることが大切です。また定期健康診断を受けることも非常に重要です。