産業医 コラム

女性特有の健康問題~理解を深め働きやすい環境を~

2021年3月3日

働く女性の健康問題

経済産業省は「働く女性の健康推進に関する実態調査(※)」を実施したところ、女性従業員の約5割が女性特有の健康問題により職場で困った経験があると回答しました。そのうちの多くが月経痛や月経前症候群によるものでした。働きやすい環境作りのためにも、「女性の健康問題」について理解を深めましょう。

▼働く女性の健康推進に関する実態調査

 

女性のライフステージと病気

女性は「思春期」「性成熟期」「更年期」「老年期」にそれぞれ、女性ホルモンの変化で起こる女性特有の病気があります。それらの病気について正しい知識を身につけることで、予防に役立てることができます。不調を感じたら我慢せず早めに医療機関を受診するようにしましょう。

 

月経困難症とは

月経期間中に、月経にともなって起こる病的な症状を月経困難症といいます。
《月経困難症の主な症状》
下腹部痛/腹痛/腹部膨満感/嘔気/頭痛/疲労や脱力感/食欲不振/いらいら/下痢/憂うつ感 等 

月経困難症の分類
月経困難症は器質的疾患(※)の有無により、以下のように分類されます。
(※)身体の組織である筋肉群や骨格などが既に変形あるいは破壊されてしまっている状態。
または著しい内臓の機能低下

■原因となる疾患がない
器質的疾患が存在しないにも関わらず、症状が出現するものです。月経時に子宮内膜から分泌されるプロスタグランジンが、子宮を過剰収縮させることが原因と考えられています。

■原因となる疾患がある
子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症など、器質的疾患が存在することが原因となり症状が出現するものです。

 

月経困難症の治療

薬物治療では、痛みの原因であるプロスタグランジン産生を抑制する鎮痛剤を使用して、痛みを緩和する方法が広く用いられています。また、低用量ピルやLEP製剤を使用して、排卵をとめて子宮内膜の増殖を抑制することで症状を軽減する方法もあります。原因となる疾患がある場合には、それに対応した治療を受けることが大変重要です。

 

 PMS(月経前症候群)とは

PMS(Premenstrual Syndrome:月経前症候群)とは、月経前、3日~10日の間続く、精神的あるいは身体的症状で、月経開始とともに軽快ないし消失するものをいいます。
《PMSの主な症状》
■精神神経症状
情緒不安定/イライラ/抑うつ/不安/眠気/集中力の低下 等
■自律神経症状
のぼせ/食欲不振・過食/めまい/倦怠感 等
■身体症状
腹痛/頭痛/腰痛/むくみ/お腹の張り/乳房の張り 等

PMS(月経前症候群)の治療
まず、出現してきた症状を記録し、月経周期との関連を確認しながら、自らの病状について理解することが大切です。
症状とうまく付き合うために、自分のリズムを知り、自分にあったセルフケアを行うことができるよう心がけましょう。
薬による治療としては、排卵抑制療法、対症療法など、症状や体質などに合わせた方法があります。

 

更年期症状・障害とは?

閉経の時期をはさんだ前後数年ずつの約10年間(一般的に45〜55歳頃)を「更年期」といいます。更年期には卵巣の機能が低下し、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減少していきます。その結果、ホルモンのバランスが崩れ、月経周期の乱れやエストロゲンの欠乏により心身にさまざまな不調があらわれます。症状の種類や強さは個人差がありますが、更年期のさまざまな不調を「更年期症状」といい、仕事や家事など日常生活に支障をきたしてしまうほどの重いものを「更年期障害」といいます。

 

更年期症状

更年期はエストロゲンの急激な低下により体に様々な変調をきたします。更年期症状はいわゆる不定愁訴(※)に属する症状が多く、症状の強弱には精神的要素が関係しています。「精神神経症状」と「血管運動神経症状」および「その他の症状」の3つに分類されます。更年期障害の症状の多くは自然に軽快するとされています。また、株式会社協和が行ったアンケート調査の結果、更年期の症状がある女性の中で、コロナ禍により2人に1人が更年期の症状が重くなったと回答しています。コロナ禍で外出できないため、人に会う機会が減り精神的な症状の増加など更年期症状に影響を与えていると考えられます。

※不定愁訴とは・・強く主観的な多岐にわたる自覚症状の訴えがあるものの、検査をしても客観的所見に乏しく、原因となる病気が見つからない状態を指す。 

 

更年期障害の対策

■食生活
更年期には、女性ホルモンの急激な減少の影響により、さまざまな不快症状が現れることがあります。又、エネルギー、脂質、骨の代謝も変化し、栄養が過剰あるいは欠乏状態になりやすく、心身の健康バランスをくずしやすくなります。そこで、更年期の女性に適した食事や食生活とはどんなものか?という問いに対する答えを突き詰めていくと、やはり「バランスのよい食事」が一番肝心である、という答えにたどりつきます。また、女性ホルモンと似た働きをする成分として注目されているのが、大豆イソフラボンです。大豆は食物繊維やオリゴ糖も多く含み、加齢とともに乱れがちな腸内環境を整えてくれる上、骨を強くするカルシウムも豊富です。

■運動
今日では適切な運動習慣が更年期にも有効であることが明らかになってきました。国内では、更年期障害を有する女性において自転車エルゴメーターによる運動、ウォーキングや水中歩行で「更年期症状の重症度を表す指数が、運動前に比べて明らかに下がった」という結果が報告されています。海外でも同じくウォーキングを中心とした有酸素運動やヨガでも効果があったという結果が出ています。

■サプリメント
サプリメントのメリットとして、手軽にいろいろな栄養素のものが手に入ります。女性ホルモンの働きを助ける成分にはいくつかの種類があるため、自分に合ったサプリメントを選んでみましょう。

 

更年期障害の治療

■ホルモン補充療法(HRT)
Hormone Replacement Therapyの略で、低下したエストロゲンを補う治療法です。エストロゲン欠乏によるのぼせ、ほてり、発汗、性交痛などの症状はもとより、気分の変調や関節痛など更年期以降の様々な症状を改善するなど幅広い効果が認められ、QOLの向上にも大きな貢献が期待できます。HRTは閉経後どのくらい経つか、子宮があるか、出血を望むかなどによって、使う製剤と使用パターンが違います。
▼HRTの種類と特徴

HRTスタート時には不正性器出血・吐き気・乳房のはりの症状が出ることがあります。また、長期でのHRTは乳癌発症リスクを高める可能性があるため定期的な乳房の検査が必要になります。

■漢方薬
漢方薬は、その患者の体質、体型や自覚症状などを総合的に判断して、症状ごとにどの漢方薬を使うかが決まります。

■抗不安薬・抗うつ剤
抑うつ気分は多くの人が更年期に経験する症状ですが、気分の落ち込み、不安感や焦燥感が強い場合は、抗不安薬・抗うつ薬などの向精神薬も有効です。

 

おわりに

女性特有の健康問題については男女関係なく理解を深めることが大切です。症状がひどくなってきた、日常生活に支障がでてきたなどがあれば、早めに婦人科を受診しましょう。