産業医 コラム

がん検診~早期発見が大切な命を守ります~

2021年2月5日

はじめに

現在日本人は、一生のうちに、2人に1人は何らかのがんにかかるといわれています。がんは、すべての人にとって身近な病気ですが、早期発見・早期診断・早期治療が重要です。がん検診の重要性を改めて見直しましょう。

がんの年齢による罹患状況の変化

がんの罹患率は、男女とも40歳代から80歳代くらいまで増加します。20歳代から50歳代前半で女性が男性よりやや高く(子宮頸がんや乳がんなど婦人科系がんの影響と考えられます)、60歳代以降は男性が女性より顕著に高くなります。

◆年齢階級別罹患率

 

がんの部位別罹患予測数

がんの部位別罹患率予測数ついて見ると、男性の罹患者数予測は前立腺がん、死亡者数予測は肺がんが1番多く、女性の罹患者数予測は乳がん、死亡者数予測は大腸がんが1番多くなっています。男女ともに肺がんと大腸がんの死亡者数が多く、前立腺がんや乳がんは罹患者数が多いですが、死亡者数は少ないことが分かります。

がんの部位別罹患予測数(男性)



がんの部位別罹患予測数(女性)

 

がんの自覚症状

がんは自覚症状が出にくい病気です。①がんの自覚症状有無のグラフを見ると、特に肺がん、前立腺がん、肝がんは罹患者の半数以上が自覚症状はないと回答しています。自覚症状が出てから病院に行った場合、既にがんが進行している可能性があります。また、②がんの5年相対生存率を見ると、がん検診で早期に発見された場合、男女共にがんの5年相対生存率が約30%高いことがわかります。がん検診を定期的に行い、早期発見・早期診断・早期治療することが重要です。

がんの自覚症状の有無 



②がんの5年相対生存率

 

がんによるコロナの重症化リスクは?

がん治療は免疫の働きを低下させてしまう場合があり、治療のための手術や抗がん剤など、コロナの重症化リスクがあることが報告されています。以下コロナウイルス重症化の比率を見るとコロナ感染者全体と比べ、がん罹患者は酸素や挿管が必要な比率が高いことが分かります。

 

コロナ禍で検診受診率が更に低下

日本ではがんによる死亡率が増加を続けている一方で、欧米ではがんによる死亡が頭打ち、もしくは減少してきています。この一因として、がん検診受診率の違いがあげられています。諸外国の子宮頸がん・乳がん検診受診率は5割以上を維持しているのに対して、日本の各種がん検診受診率は概ね3-4割台と低い数値となっています。更に日本対がん協会が全国の支部に行ったアンケートでは、コロナの影響で2020年のがん検診受診者は「例年に比べ3割減少する」と見込む支部が3分に2に上がりました。コロナ禍で受診率が下がった状態が続けば、今後進行がんとなって見つかる割合が増すことが懸念されています。

がん検診の項目

がん検診はメリットとともにデメリットもあるため、近年がん検診として効果的な方法を科学的に評価したうえで、有効であると分かってから公共の政策として実施することが国際標準となってきました。科学的な方法によって死亡率減少効果が認められたがん検診の検査方法・対象年齢・受診間隔については、厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(平成28年一部改正)」に定められており、市町村の対策型検診はこれに基づいて行われることが推奨されています。
◆指針で定めるがん検診の内容
以下5つのがん検診は、死亡率の低下が認められた検診です。

がん検診の流れ

がん検診は、一見健康な人に対して「がんがありそう(異常あり)」、「がんがなさそう(異常なし)」ということを判定し、「ありそう」とされる人を精密検査で診断し、救命できる「がん」を発見することを目的としています。がん検診は、「がんがある」、「がんがない」ということが判明するまでのすべての過程を指します。がん検診を受けて「異常がない」場合は、定期的に次回の検診を受診することになりますが、「精密検査が必要」と判断された場合には、精密検査を受診することが重要です。途中で精密検査や治療を受けない場合は、がん検診の効果はなくなってしまいます。前述したとおり現在の日本におけるがん検診の精密検査受診率は65-85%前後と低値にとどまっており、精密検査の受診率向上が課題の一つとされています。異常を指摘されたら、ご自身やご家族のため恐れず、しっかり受診しましょう。

◆がん検診の流れ

 

おわりに・・

がん検診で「がん」を早期に発見することは、大切な命を守ることに繋がります。コロナ禍でも先延ばしにせず、自分や家族、大切な人のためにも定期的に検診するようにしましょう。