産業医 コラム

糖尿病~予備軍も含め成人の6分の1人が罹っている!~

2020年10月12日

糖尿病はよく耳にする病名だと思いますが、実際どれくらいの患者数がいるのでしょうか。平成28年国民健康・栄養調査では、糖尿病に罹っている人が1000万人、予備軍(糖尿病が強く疑われる者)が1000万人と推計されています。日本では、成人の6人に1人が糖尿病あるいはその予備軍ということです。平成30年国民健康・栄養調査では、糖尿病の方の割合は男性18.7%、女性9.3%で、年齢が上がるとともに男女ともに有病者が増える傾向が続いています。

 

糖尿病はどんな病気?

糖尿病はインスリンの作用不足により起こる病気です。私たちの体が正常に活動するためにはエネルギー源が必要です。食事によって腸から吸収されたブドウ糖は血液の中に入ります。すると膵臓からインスリンというホルモンが出ます。インスリンは、肝臓、筋肉、脂肪組織などの細胞にブドウ糖が入るための入場券のような役割を持っており、インスリンがないとブドウ糖は細胞の中に入ることができません。インスリンが正常に働くと、血中のブドウ糖は速やかに細胞に取り込まれ、筋肉を動かす、脳を働かせるなど、エネルギー源として使うことができる状態になります。インスリンの出方が悪くなり、効きが悪くなると、血液中のブドウ糖が細胞の中に入ることができなくなり、血液中のブドウ糖の濃度(=血糖値)がいつも高い状態になります。このような状態が糖尿病です。

 

糖尿病の症状

実は糖尿病の多くは自覚症状がありません。症状がある場合は「のどの渇き」「倦怠感」「体重減少」「尿量の増加」などがあります。糖尿病は自覚症状が少ない病気ですが、早期発見・治療によって症状の悪化を防げることができます。体に異変を感じたら、早めに病院を受診しましょう!

 

慢性合併症に要注意

高血糖の状態が続くと、全身の血管が傷ついて様々な合併症が出てきます。糖尿病は長い時間をかけて血管をボロボロにしてしまう病気ともいえます。細い血管の病気には、腎臓の働きが悪くなる「糖尿病性腎症」、目の中の血管が傷ついて視力が低下する「糖尿病性網膜症」、手足の痺れや感覚が鈍くなるなどの症状が見られる「糖尿病性神経障害」があり、これらを糖尿病の三大合併症といいます。太い血管の病気には、「脳卒中」や「心筋梗塞」などがあります。他にも、肺炎や歯周病、皮膚炎も起こりやすく、認知症とも関連があることがわかってきました。

 

新型コロナウイルス感染症と糖尿病

糖尿病では、白血球の働き(好中球の遊走能、接着能、貪食能、殺菌能)が低下しており、特に血糖コントロールが悪い場合に感染症が長引いて重症化しやすいです。現在世界中で感染が広がっている新型コロナウイルスに関しても重症化ハイリスクとなります。糖尿病を治療中でも、血糖コントロールが良好でない場合は、在宅勤務など感染リスクを避ける働き方が望ましいでしょう。

 

糖尿病の分類について

糖尿病は、その原因により、「1型糖尿病」、「2型糖尿病」、「遺伝子異常や薬剤、感染症などによる糖尿病」、「妊娠糖尿病」の4つに分類されますが、主な病態である1型糖尿病と圧倒的に多い2型糖尿病について説明します。
<1型糖尿病>
割合:約5%
発症年齢:小児〜思春期に多い。中高年でも認められる
家族歴:少ない
体系:やせ~正常が多い
原因:膵臓でインスリンを作るβ細胞という細胞が壊れてしまうため、インスリンが膵臓からほとんど出なくなり、血糖値が高くなる
・症状の出方:多くは急激に症状が出現する

<2型糖尿病>
割合:約95%
発症年齢:40歳以上に多く、若年発症も増加している
家族歴:高頻度
体系:正常〜肥満体型が多い
原因:生活習慣や遺伝的な影響により、インスリンが効きにくく、血糖値が高くなる
・症状の出方:初期は無症状だが、進行するにつれ緩徐に症状が出現する

 

糖尿病の診断

2型糖尿病の多くの方は初期にはほとんど症状がありません。そのため、年に一度は健康診断を受けて、自分の血糖値を確かめる必要があります。下記の場合、糖尿病である可能性が高くなります。
・空腹時血糖が126mg /dl以上
・随時血糖が 200mg /dl以上
・HbA1c(ヘモグロビンエーワンシーと呼びます)が6.5%以上
HbA1cは、採血時から過去1、2ヶ月間血糖の平均値を反映するので血糖コントロールの指標になります。糖尿病以外の病態でも異常値になることがあります。空腹時血糖が100〜109mg/dlは正常域ですが「正常高値」といい、高血圧、肥満、脂質異常症がある人は糖尿病に移行しやすいとされ、詳しい検査をすることが望ましいです。

 

糖尿病の治療

糖尿病の治療は食事療法や運動療法が第一です。状況に応じて、薬物療法も組み合わせて血糖値を良好な状態に保ち、合併症を予防して健康な人と変わらない人生を送ることが治療の目標です。
【食事療法】
・食事のとりすぎに気をつける  
・脂身の多い肉などコレステロールや飽和脂肪酸を多くとりすぎない
・毎日の活動量に必要なエネルギー量に合わせた栄養バランスの取れた食事をとる 
【運動療法】
・ウォーキングやジョギング、水泳などインスリンの働きを高める効果がある有酸素運動を行う 
・ウォーキングの場合、1日約1万歩、消費エネルギーに換算すると160~240kcalの消費が望ましい
【薬物療法】
・飲み薬と注射薬がある(注射薬は自身でお腹や太ももなどに注射する「自己注射」を行う) 
・インスリンの働きを高める、インスリン分泌量を増やすなど様々なタイプがある。

 

生活習慣の見直しを

2型糖尿病は生活習慣病とされています。規則正しい生活を送り、日頃から予防しましょう。
・適度な運動
・バランスの良い食事
・禁煙
・定期健診で早期発見 

 

最後に

糖尿病は現時点では完全に治すことができない病気といわれています。自分の生活習慣を見直し、毎日の自己管理がとても重要となります。気になることや心配なことがあればお気軽にウェルネスセンターまでご相談ください。