産業医 コラム

熱中症~暑い夏を乗り切るための正しい予防と対処法

2020年6月17日

近年、GW頃でも急に真夏日が続くこともあり、熱中症には気をつけなければいけません。夏の暑くなってからの準備ではなく、今のうちから知識を身に着け、熱中症の予防と対策に備えましょう。例年特に梅雨明け以降の7・8月の熱中症発生件数が急激に上昇するため、これからの時期は注意が必要です。

熱中症とは?

熱中症は、体温が上がり体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体温の調節機能が働かなくなったりして起こる様々な症状を起こす病気です。人間の体温を下げる働きは、体表面から空気中への熱放散と、汗などの気化熱によります。外気温が高くなると熱放散が上手くいかなくなり、気化熱のウエイトが大きくなっていきますが、汗をかきすぎて体の水分や塩分が減ってくると、発汗量の減少や血液の水分量の減少からくる体内の熱の運搬能力の低下が起きて、体温が上昇してしまいます。

熱中症の重症度

Ⅰ度: 現場での応急処置で対応できる軽症

【症状】立ちくらみ、筋肉痛、筋肉の硬直、手足のしびれ、気分の不快、大量の発汗 

【応急処置】風通しがよく涼しいところへ移動・足を高くして横になる・冷やした水分と塩分を補給

 

Ⅱ度: 病院への搬送を必要とする中等症    

【症状】頭痛、吐き気、嘔吐、倦怠感、虚脱感
【応急処置】衣服を脱がせる、きついベルトやネクタイをゆるめる。 冷やしたタオルや氷嚢を首の両脇、脇の下、

太ももの付け根にあてるなど積極的に体を冷やす

 

Ⅲ度: 入院して集中治療の必要性のある重症  

【症状】意識障害、けいれん、手足の運動障害 、高体温(体に触ると熱い。いわゆる熱射病、重度の日射病)
【応急処置】救急車を呼び、最寄りの病院に搬送する

⇒血液凝固障害、脳、肝、腎、心、肺など全身の多臓器障害を合併し、死亡率が高い。

熱中症の起こりやすい条件

熱中症は、真夏の炎天下で運動をしていたといったケースを想像するかもしれませんが、実は梅雨の合間に突然気温が上がったなど、身体が暑さになれていない時期にかかりやすい病気でもあります。具体的には、次のような環境では注意が必要です。  

✔ 気温が高い、湿度が高い  
✔ 風が弱い、日差しが強い  
✔ 急に暑くなった  

例えば、工事現場・運動場・体育館・ビルやマンションの最上階・風呂場などがあげられます。また、家の中でじっとしていても室温や湿度の高さから熱中症にかかることもあり、2016年の国の統計では、熱中症による死亡者の38.8%が家庭で発生していました。最近ではこの様な家庭で発生する熱中症が、高齢者を中心に増加しています。

熱中症を予防するには

熱中症を予防するには、次のようなことに気をつけましょう。
○ 暑さを避ける
外出時にはなるべく日陰を歩く、帽子や日傘を使うなどして暑さを避けましょう。天気予報も注意して、気温の上がる日時の活動は可能な限り控える事をお勧めします。家の中でも、ブラインドやすだれで直射日光を遮り、扇風機やエアコン等は無理に控えず十分活用しましょう。服装についても、襟ぐりや袖口があいたデザインなどゆったりしたものや、汗を吸いやすい・通気性の良い素材などを選びましょう。

○ こまめな水分補給
暑い日は発汗も増え、体内の水分が失われ易いため、のどが渇く前にこまめに水分を補給しましょう。
ただし、コーヒーや緑茶などのカフェインが多く含まれている飲み物、アルコール類は利尿作用があるので適しません。

○ 急に暑くなる時は特に注意
熱中症は、例年、梅雨明けの7月下旬から8月上旬に多発する傾向があります。これはまだ暑さに体が慣れていないためです。上手に発汗できるようになるには、暑さへの慣れが必要です。暑い環境での運動や作業を始めてから3 ~4日経つと、汗をかくための自律神経の反応が速くなって、体温上昇を防ぐのが上手になってきます。さらに、3 ~ 4週間経つと、汗に無駄な塩分をださないようになり、熱けいれんや塩分欠乏によるその他の症状が生じるのを防ぎます。このようなことから、梅雨明けや台風直後などの急に暑くなった日、久しぶりに暑い環境で活動した人、涼しい地域から暑い地域へ移動した人などは、暑さに慣れておらず熱中症になりやすいので、より注意が必要になります。

○ 暑さに備えた体作り
日頃からウォーキング等で汗をかく習慣を身につけて徐々に体を暑さに順応させていけば、夏の暑さにも対抗しやすくなり、熱中症にもかかりにくくなります。じっとしていれば汗をかかないような季節からでも、少し早足でウォーキングし、汗をかく機会を増やしていれば、夏の暑さに負けない体をより早く準備できることになります。

こんな人は特に注意!

熱中症の発生には、その日の体調が影響します。風邪や下痢、二日酔いなどの脱水状態や食事抜きの状態では、暑いところでの活動は控えましょう。また、活動の後には体温を効果的に下げるように工夫します。そのためには、十分な水分補給(大量に汗をかいた場合は塩分も補給)とよい睡眠を取り、涼しい環境でなるべく安静に過ごすことが大切です。睡眠不足や肥満の人、小児や高齢者、内臓の機能が低下している人、自律神経や循環機能に影響を与える薬物を飲んでいる人も、熱中症に陥りやすいので活動強度に注意しましょう。

終わりに・・

自分でも気がつかないうちに、熱中症になってしまう場合があります。家族や友人など、周りの人とも水分補給や休息をとるように声をかけ合うことが、命を守るための大切なコミュニケーションになります。熱中症の予防や対策に備えながら、暑い夏を乗り切りましょう。
                    

【参考文献】
環境省 熱中症環境保健マニュアル
http://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_manual.php

厚生労働省 平成30年の「職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」
https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/000509930.pdf