産業医 コラム

がん検診~定期的な検診で早期発見を~

2019年2月7日

がんによる死亡の増加

がんになる方は年々増えており、最近の研究では、現在の日本人のがんの生涯罹患率は約50%、すなわち2人に1人はがんにかかる、と言われています。またご存知の通り、日本人の全死因に占めるがんの割合は年々増加しており、1980年に死因のトップになって以来、その傾向は続いています。
平成29年の統計によりますと、死者の3.6人に1人はがんによる死亡です。

■主な死因別にみた死亡率の年次推移(平成29年構成労働省)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参考:厚生労働省 平成29年(2017)人口動態統計月報年計(概数)の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai17/dl/kekka.pdf

 

がんの部位別死亡率

がんの部位別死亡率について見ますと、男性では肺・胃・大腸・肝臓の順になっており、特に肺がんが急激に増えています。女性では、大腸・肺・膵臓・胃・乳房・肝臓となっていて、男性とは大きく異なっています。

■悪生新生物(がん)の主な部位別死亡率(人口10万対)の年次推移(平成29年厚生労働省)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参考:厚生労働省 平成29年(2017)人口動態統計月報年計(概数)の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai17/dl/kekka.pdf

 

低い日本の検診受診率

日本ではがんによる死亡率が増加を続けている一方で、欧米ではがんによる死亡が頭打ち、もしくは減少してきています。この一因として、がん検診受診率の違いがあげられています。

平成28年に実施された「国民生活基礎調査」によると、日本のがん検診受診率は、男性における胃がん・肺がん・大腸がん検診の受診率は4〜5割程度であり、女性における乳がん・子宮頸がん検診を含めた5つのがん検診の受診率は3〜4割台となっており、特に子宮頸がん・乳がんについては、検診受診率が低い状況にあります。

諸外国では、乳がん検診・子宮頸がん検診は、国策として対策型検診が行われており、高い受診率を維持しています。 アメリカでは任意型検診が主体ですが、子宮頸がん検診・乳がん検診は高い受診率を維持しています。 これら先進国の中で、日本の受診率は40%代と極めて低いのが実状です。

■がん検診受診率(日本)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■がん検診受診率の国際比較

子宮頸がん検診(20-69歳)               乳がん検診(20-69歳)

参考:厚生労働省 がん検診受診率50%達成に向けた集中キャンペーン
https://www.gankenshin50.mhlw.go.jp/campaign_30/outline/low.html

 

日本のがん対策の歩み

がん検診の受診率が低い状況を受けて、わが国においてもがん検診受診率向上のための取り組みが行われてきました。がん対策基本法に基づき策定されたがん対策基本計画の第二期において、がん検診受診率の5年以内50%が目標として掲げられました。現在もその目標値は達成されておらず、第三期においては引き続きがん検診受診率50%を目標とすることに加えて、がんの疑いがある場合の精密検査受診率を90%にすることが目標とされています。
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1981年:悪性新生物(がん)が死亡原因の第一位となる
1984年:対がん10カ年総合戦略の策定
2005年:がん対策推進本部の設置(厚生労働省)
2006年:がん対策基本法の成立
2007年:がん対策推進基本計画の策定
2009年:がん検診50%推進本部の設置
2012年:がん対策推進基本計画の見直し(第二期)
    “がん検診の受診率を5年以内に50%を達成する”
2017年:がん対策推進基本計画の見直し(第三期) 
    “がん検診受診率を50%(現在30-40%)、精密検査受診率を90%(現在65-85%)に高める”
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 参考:我が国のこれまでのがん対策について(厚生労働省健康局 がん・疾病対策課)

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000213276.pdf

 

がん検診の種類

がん検診は「対策型検診」と「任意型検診」の2種類に分けられます。

<対策型検診>
ある集団全体の死亡率を下げるために行われるものです。市区町村が老人保健事業で行っている住民検診などが対策型検診にあたります。公的な補助金が出るので、無料か自己負担が少額ですみます。がんの種類によって、検診方法が決まっています。

<任意型検診>
個人が自分の死亡リスクを下げるために受けるものです。人間ドックがその代表例です。職場によっては補助金が出ることがありますが、基本的には全額自己負担のため、自己負担額は多くなります。検診内容の種類や料金、オプションで選べる検査の種類は、医療機関によって異なり、個人で選択することができます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参考:日本対がん協会 がん検診の種類
https://www.jcancer.jp/about_cancer_and_checkup

 

がん検診の項目

がん検診はメリットとともにデメリットもあるため、近年、がん検診として効果的な方法を科学的に評価したうえで、有効であると分かってから公共の政策として実施することが国際標準となってきました。

科学的な方法によって死亡率減少効果が認められたがん検診の検査方法・対象年齢・受診間隔については、厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(平成28年一部改正)」に定められており、市町村の対策型検診はこれに基づいて行われることが推奨されています。

■指定で定めるがん検診の内容
以下5つのがん検診は、死亡率の低下が認められた検診です。

 

 

 

 

 

 

 

 

参考:厚生労働省がん対策情報 市町村のがん検診の項目について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000059490.html

 

がん検診の流れ

がん検診は、一見健康な人に対して「がんがありそう(異常あり)」、「がんがなさそう(異常なし)」ということを判定し、「ありそう」とされる人を精密検査で診断し、救命できる「がん」を発見することを目的としています。がん検診は、「がんがある」、「がんがない」ということが判明するまでのすべての過程を指します。
がん検診を受けて「異常がない」場合は、定期的に次回の検診を受診することになりますが、「精密検査が必要」と判断された場合には、精密検査を受診することが重要です。途中で精密検査や治療を受けない場合は、がん検診の効果はなくなってしまいます。前述したとおり現在の日本におけるがん検診の精密検査受診率は65-85%前後と低値にとどまっており、精密検査の受診率向上が課題の一つとされています。

■がん検診の流れ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■精密検査受診率
平成27年度地域保健・健康増進事業報告

 

 

 

 

 

 

 

  

              

参考:国立がん研究センター がん情報サービス
https://ganjoho.jp/public/pre_scr/screening/about_scr.html

 

がん検診における精密検査

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参考:国立がん研究センター がん情報サービス
https://ganjoho.jp/public/pre_scr/screening/about_scr.html

 

おわりに

がん検診は、救命できる「がん」を発見することを目的としています。
“自分のため” ・ “家族のため” ・ “大切な方のため”にも、定期的に受診するようにしましょう。