カウンセラー コラム

雑談の力~会えない時代に欠かせないコミュニケーション~

2021年5月7日

昨今、テレワークが急速に進み、雑談の必要性が叫ばれています。

アメリカ発祥の音声SNS「Clubhouse(クラブハウス)」が世界で注目されているのも、コロナ禍で人と会えない中、雑談が失われた渇きを癒すからとも言われていますし、「Chatwork」など、ちょっとした相談や雑談の活性化を目的としたコミュニケーションツールがリリースされたりもしています。

ひと昔前までは、仕事中のおしゃべり(雑談)は無駄話とされ、「しゃべっている暇があるなら手を動かせ!」と注意されることもありました。でも今、改めてその意義が重要視されているのです。

なぜでしょう?雑談の効果(力)とは?そして今回は、雑談を円滑にするためのヒントについてもお伝えします。

 

なぜ雑談が必要?

株式会社リクルートキャリアが、全国の20~60代の新型コロナウイルス禍でテレワークをするようになった就業者に仕事に関するアンケートを実施したところ(※)、

全体の約6割がテレワーク前にはなかった仕事上のストレスを実感しており、そのうち約7割はいまだにストレスが解消されていないことがわかりました。

※2020年1月以降にテレワークを実施した人(公務員、パート・アルバイトを除く)2272人に対し、2020年9月に調査を実施

 

こういったストレスの原因の一つとして、テレワークによって仕事の進め方が変化し、従来のコミュニケーションや協働が分断されていることが考えられます。実際に同調査のデータを用いてモチベーションに影響する仕事の要素について調べたところ、仕事の「全体像の把握」や「重要性の実感」、「他者からのフィードバック」という要素が損なわれていることがわかりました。

さらに、同調査で仕事中に雑談がある人とない人を比較したところ、雑談がない人はストレスが解消できていない割合が大きく、両者のストレスの解消具合には14.1ptの差が出たのです。 

つまり、仕事中の雑談がテレワークのストレス緩和に有効である可能性が高まっているのです。

 

雑談の効果

テレワークでは相手の反応がつかみづらいためか、会議などでは「はい、皆さん揃いましたので始めます」というように、すぐ本題に入りがちです。フォーマルコミュニケーションが主流になると、成果や効率、生産性ばかり求められることになります。

しかし、2015年にアメリカのGoogle社が発表した「効果的なチームの条件とは何か」の調査結果では、生産性に影響するのはメンバーの能力や働き方ではなく、「心理的安全性」であることがわかりました。つまりチームのメンバー全員が「こんなことを言ったら否定されるのでは」「能力が低いと思われるのでは」といった不安や恐怖を感じずに仕事に取り組めることで、メンバーが自信を持ち、新たなアイデアの創出や問題解決に向けた活発な議論に繋がり、職場のミスもエスカレーションされやすくなるというのです。

そして、心理的安全性を高めるには、雑談のようなインフォーマルコミュニケーションが有効であると言われています。

 

(例)
Aさん「在宅だと運動不足になりがちで」
Bさん「お昼休憩でもほとんど歩かないですものね」

Aさん「今、家の近くで工事をしていて音がうるさいんです」
Bさん「テレワークだと近所の環境に影響されますね」

 

など、雑談とは一見ムダとも思えるような、とりとめのない会話のことであり、そこに成果は求められません。時間を共有し、会話を交わすことで「いまここにいてくれて有難う」というメッセージを交換する、存在を承認し合う行為とも言えるのです。

私たちは普段、仕事を遂行するにあたり、予算、業績、ミッションなど会社の評価軸で定めた基準で「出来た・出来なかった」と結果を承認されることが多くなります。しかし、会社の仕事には明確な軸や基準におさまらない、判断できないグレーゾーンが沢山あります。成果に向けたプロセスに対する「行動承認」や、自分にとって相手がどういう存在なのかをフィードバックする「存在承認」がより重要になってくるのです。

テレワークでは相手が見えないことから、この「行動承認」、「存在承認」が大きく欠落しがちです。非対面であるからこそ、より強く意識して相互承認することが、これからの職場で欠かせないのです。

 

雑談を円滑にするためのヒント

雑談は成果を求められない会話ですから、基本的にルールはありません。でも、中には雑談が苦手という方もいらっしゃるでしょう。仲のいい友人なら共通の話題もあるものの、仕事関係や微妙な関係の相手と、とりとめのない会話をすることは場合によっては難しいと感じられることもあるかもしれません。
そこで、困った時のヒントをいくつかお伝えします。

 

  1. 1、初めは「挨拶プラスα」から

(例)
「おはようございます。昨日断捨離をしたんですけど、結構大変でした」
「お疲れ様です。先日は仕事のフォローをしていただき、ありがとうございました」
など、時間にすれば10秒程度でも構いません。
自分の体験談、気持ち(感謝)などは話しやすい話題の一つです。自分のことを開示して伝えることで、相手も心を開いて話しやすくなる効果もあると言われています。

 

  1. 2、相手の名前を呼ぶ

(例)
「〇〇さん、Zoomの背景、素敵ですね!」
「△△さん、ちょっとお疲れのように見えますが、お仕事忙しいですか?」
多くの人は自分の名前が好きで、呼ばれると嬉しいと感じたり、印象に残るというさまざまな実験結果があります。親しみを感じてもらえ、より話しやすくなる効果が期待できます。

 

  1. 3、相手の質問には返事を2つ返す

(例)
「昨日ホークスの試合観ましたか?」
「いいえ、昨日は観ませんでした。ところで今年もタカ・ガールデーはあるんですかね。」
のように、「いいえ」だけでは話が終わってしまいますが、質問で返せば話が広がるかもしれません。

 

  1. 4、「面白い話をしなくてはならない」「役立つ情報提供をしなくてはならない」などと思わなくていい

雑談に「~でなくてはならない」という気負いは禁物。ビジネスで求められるロジカルな話法も、雑談では使わない方がホッとする場合もあります。自信がなければ「くだらないんですけど」「まとまっていないんですけど」と前置きするのもいいでしょう。

 

  1. 5、傾聴スキルを使って相手に話してもらう

傾聴スキルを使うと、相手は「わかってもらえた」「この人なら話しても大丈夫」と感じて話しやすくなります。8対2または7対3くらいの割合で相手に話してもらいましょう。スキルをいくつかご紹介します。

・あいづち:「はい」「うん」など
・繰り返し:相手が発した事柄や感情にフォーカスして繰り返す
(例)「この間、PayPayで買い物したら2000円も戻ってきてラッキーでした!」→「2000円も!ラッキーでしたね!」

・要約:ところどころで相手の話をまとめる
(例)「つまり~ということですね」

・質問:相手の話を深堀する
(例)「もう少し詳しく教えてもらえますか?」

 

  1. 6、ほどよいところで切り上げる

あくまでも雑談であることを忘れずに、タイミングよく「ありがとうございました」と終わらせましょう。いつまでもダラダラと続けるのは逆効果です。

 

いかがでしたでしょうか。
世の中には「雑談力」をテーマにした書籍も多くあり、「コミュニケーション力」と同様、人を評価するための能力基準のように捉われがちです。でも、家族や友人との会話など人生の多くの時間は実は雑談で成り立っていますし、本来は自由で楽しいものなのです。
そして職場で雑談をすることで、心理的安全性を高め、困っていることや抱えている案件などの話をお互い知ることができ、チーム内でのサポートや報連相に繋がるという効果を期待することもできます。
「課会の前に5分」、「雑談ミーティング」、「オンラインランチ」、もちろんチャットや電話で個別にでも構いません。
皆さんの職場でも、有効に、楽しく、雑談してみませんか。

 

【参考文献】
『新型コロナウィルス禍における働く個人の意識調査 テレワーク経験者の6割、テレワーク前にはなかったストレスを実感 仕事中の「雑談」有無の違いでストレス解消具合に14.1ptの差』 /株式会社リクルートキャリア 2021年1月21日
「耕論 新型コロナ 雑談減ったなあ」 /朝日新聞朝刊 2021年4月7日
「超雑談力」 /五百田達成 ディスカヴァー・トゥエンティワン