カウンセラー コラム

志と情熱を持ち、輝き続けるためのSOC

2017年4月27日

新入社員の皆さん、入社おめでとうございます。皆さんの志や情熱に触れ気持ちを新たにした先輩社員も少なくないのではないでしょうか。
また、この時期は新入社員だけでなく先輩社員の皆さんも、配属、異動などで多くの方々が慣れない環境や初めての仕事に向き合っていることと思います。特に望まない配属や異動になった場合、「この仕事がしたくて入社したのではない」といった気持ちになり急にやる気がなくなったり、思うように仕事が出来ないことで自信を失いかけたり、仕事量の多さに処理しきれず、どうすればいいかわからなくなり、強いストレスを感じる場合があります。

この状態が長く続くと、志が揺らいだり、情熱を失っていくことにつながりやすくなります。

SOCという考え方を理解し実践することは、こういった強いストレスの中でもいきいきと働く力を高め、志や情熱の火を灯し続けていくことに役立ちます。

SOCとは何か?
SOCは、Sense of coherenceの略で「首尾一貫感覚」と訳されます。医療社会学者のA・アントノフスキーが第2次世界大戦中に捕虜生活を送ったユダヤ人にインタビューを行い、困難な状況の中でも健康を維持できる人と、健康を害する人がいたということを研究して提唱した概念で、健康を維持できる人は「首尾一貫感覚」があるとされています。
この首尾一貫感覚とは、次の3つの感覚で構成されています。

第一は「把握可能感」 (わかる感)
これは、自分が置かれている状況が秩序立てて理解でき、また、今後置かれる状況がある程度予測できるという感覚です。

第二は「処理可能感」(できる・なんとかなる感)
これは、目の前の困難そうな課題に対応できる資源はいつでも得られ、何とかなる、何とかやっていけるという感覚です。

第三は「有意味感」(やるぞ感)
これは、どんなことに対しても、何らかの意味を見いだせる感覚です。

わかりやすく言うなら、あなたが目の前に困難な課題があり強いストレスがある状態でも、自分の仕事内容や先々に起こることもある程度把握でき、何とかやっていけそうだと思え、仕事の意味ややりがいを感じられたら、いきいきと働いていきやすくなるということを唱えています。
こう言ってしまうと「それができないから困っているんだよね」と思われる方も少なくないのではないでしょうか。
では、どうすればそれが実践できるかという話に移っていきたいと思います。

①把握可能感(わかる感)の高め方
把握可能感は、自分が置かれている状況が把握でき、また、今後置かれる状況がある程度予測できるという感覚です。もし、皆さんが仕事の量の多さに圧倒され、処理しきれない気持ちに陥ったり、役割の曖昧さに強いストレスを感じていたら、以下のような問いを自分に投げかけ整理してみてください。

・あなたの仕事は何ですか? 何にどの程度の時間をかけていますか?
・担当している仕事はどのような業務手順ですか?
・わかっている業務とわかっていない業務はなんですか?
・あなたの所属している組織の方針や業務内容はなんですか?
・業務全体の中であなたはどのような行程を担当していますか?
・自分の仕事の後行程と前行程の仕事はどのような仕事ですか?
・今後の業務スケジュールや繁忙状況はどうなりますか?
・コントロールしやすい業務としにくい業務は何ですか?

ここで大切なことは頭の中で考えるのではなく、書きだして目に見えるようにすることです。自分でできない場合は上司や先輩と一緒にやってみることをお勧めします。特にこういったことを考えることさえ苦しい場合は上司・同僚やカウンセラーに相談してみてください。

今、仕事がどうなっていて、この先どこまで頑張ればいいかが見えるようになると、まず心理的に安心できるようなります。

②処理可能感(できる感)の高め方

何とかなる、何とかやっていけるという感覚ですが、最初から仕事ができる人はいません。
自分が自転車に乗れるようになった時を思い出してください。乗り方を教えてくれ、できない自分を励ましてくれる人がいたのではないでしょうか。今、なんでも自分だけでやろうとしていませんか? 誰かに頼ることを忘れていませんか? 
できる感は、最初は自分だけで創るのはなかなか難しいものです。頼れる存在があると少し難しい課題などにぶち当たってもなんとかなると感じやすくなります。自分で考え解決しようとすることも大切ですが、抱え込みすぎないように注意し、上司や頼れる先輩等に相談し援助を求めることも忘れないでください。

また、大きな課題はどこから手をつけていいか途方に暮れる時があります。課題に取り組む際は、大きな課題を小さな課題にブレイクダウンし、小さな課題をひとつひとつ処理することで徐々にできる感を高めていく工夫も効果的です。

③有意味感(やるぞ感)の高め方
どんなことに対しても何らかの意味を見出せるという感覚です。
確かに希望通りの配属ではなくやりたい仕事ができないと、なかなか目の前の仕事に対してやるぞ!という気持ちにはなりにくいかもしれません。しかし、目の前の仕事を意味のあるものと感じるか、意味のないものと感じるかは皆さんの見方によって決められているのです。どうみるかを選択しているのは皆さんなのです。

想像して頂きたいのですが、希望通りの仕事に配属され続ける人がどのくらいいるでしょう?恐らく多くはないはずです。

本来やりたくない仕事だとしても、その仕事が自分の将来のキャリア形成にどんな意味を持つ可能性があるのか、社会人としての成長にどのような意味があるのかを考えてみてください。また、自分だけの意味ではなく、広く社会や顧客に目を向け、あなたの仕事の結果が生み出す貢献の意味を考えてみてください。
それでもなかなか意味付けがしにくい場合もあります。そういった場合は、その部署でいきいきと働く先輩や上司に意見を聞いてみることで、自分の見方が偏っていることに気づく場合もあります。

最後に管理職の皆さんへ~SOCを高める上司の関わり方~
夢と希望をもって入社した社員が高い志と情熱を持ち続け、輝き続けていくために管理職の皆さんの関わり方は非常に大きな影響を及ぼします。SOCの考え方にそって注意点を3つ挙げてみました。

  • ①把握可能感(わかる感)を高める支援
    仕事の全体像を把握できるよう、自分の担当している仕事が、工程のどこに当たるのかを示したり、一緒に業務内容を書き出しながら整理することや先々の予定を情報共有すると良い場合があります。

  • ②処理可能感(できる感)を高める支援
    処理可能感の低いメンバーには、最初から完璧を求めず、できないことがあったら相談するように伝えるとともに、スモールステップでそこまで出来たことやその頑張りを評価することも有効です。目標や期待値に届いていないことに焦点を当てすぎると、メンバーが次の挑戦に向かうエネルギーが低下してしまいます。

    ③有意味感(やるぞ感)を高める支援
    仕事をアサインするときには、本人にとっての意味と、顧客や社会、経営にとっての意味を一緒に考え対話を通じて示すことも必要です。上司の考えを伝えることも大切ですが、以下のような問いを軸にしてメンバーと対話してみませんか。時に不満や不安な気持ちも受け止め寄り添うことがメンバーとの信頼関係を高め、自分なりの答えを出していくことにつながります。

    ・今の仕事をどのように感じていますか?(観ていますか?)
    ・この仕事で得られることは何だと思いますか?
    ・この仕事をすることで、どんな点が成長できると思いますか?
    ・この仕事で得られた知識やスキルはキャリア形成に向けてどのように役立ちそうですか?
    ・この仕事は誰に対してどのような貢献をする仕事だと思いますか?
    ・目標を達成した時に得られるものはなんだと思いますか?

    高い目標への挑戦には、愛のある温かい支援が必要です。

【参考文献】

アーロンアントノフスキー著 山崎喜比古・吉井清子監修(2001年)『健康の謎を解く-ストレス対処と健康保持のメカニズム』 有信堂高分社.
蝦名玲子著(2012) 『ストレス対処能力SOC専門家が教える折れない心をつくる3つの方法』 大和出版社.
ヘンリー・キムジーハウス/キャレン・キムジーハウス/フィル・サンダール著 CTIジャパン訳(2012年)『コーチング・バイブル』 東洋経済新報社